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(4) 出撃準備


 どの位寝ただろうか、すぐに起こされて出撃準備。索敵機はもう飛び立ったとのことで司令からの訓示、敵状説明、準備出来次第離陸となる。

 今迄の話で戦争に行くのだと頭の中では分っているが、体の方がと云うかどうしても実感がわかない。実戦の経験はないし、三番機の電信員、電波は封鎖されているし、唯飛行機に乗せてもらっているだけ。電波を出すのは自爆する時位で、敵発見とか敵状報告等は一番機の電信員の仕事だし、どうも緊張しない。だが、1時間も飛び陸地も見えない大海原で機銃の試射をする頃から緊張してくる。

 高度は三千米(メートル)くらいだろか、或いはそれより下だろうか、寒くないのに体がふるえてくる。操縦員から辨当(弁当)を持って来る様に云われ、朝食には早いのにと思いながら持って行くとオカズの包みだけを取って他の人にも皆食事をする様にと、「腹がへっては戦は出来ぬ、めしを食っておかないと死んでも死にきれんぞ」と笑いながら言われる。

 私なんか、もうその頃はカチンカチンで食事どころか敵が来たらどうしよう、撃たれたらどうしよう、逃げ場はないのだーと頭の中は支離滅裂、おそらく顔も真っ青になっていただろう。幸いに?その時は会敵せず基地に帰ることになった。

 飛行機の爆弾或いは魚雷は、使はづにそのまま着陸すると着陸のショックで落ちて爆発したりして危険なので持って帰ることは殆んどなく投棄してしまう。私の機も魚雷を発射することになり操縦席より良く見ておけと云われたが魚雷を見るのか飛行機を見るのかは分らないまま機銃座より海面を見る。

 降下を始めるとみるみるうちに海面がせり上がって来て海の中に突っ込んでしまいそうな錯覚に陥り思わず身をよじってしまう。手が海に届きそうな低さだ。突然、すぅっと身の押えられる様な気がする。投下の瞬間、機は軽くなり続いて急速上昇にうつる。あっと云う間に海面が遠くなって行くが魚雷は何処を走っているのか見当がつかない。もちろん飛行機の後方であるのは間違いないのだが。





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