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(5) 魚雷を見せて欲しかった


 基地に帰り、操縦員に旋回して魚雷の走っている上を飛んで魚雷を見せて欲しかったと云うと、「敵艦の上でその様なことをしたら撃ち落とされるだけだ、魚雷を発射したらどうやって無事に帰れるかだけを考えれば良い」と云われ、なる程と感心したりした。訓練中に教わった事と実戦とでは余りにも違いが大きく、敵に会わないまでも貴重な体験をした。

 基地で得た情報によれば、我々の探し求めていた敵は台湾を攻撃中とのことであり、直ちに攻撃準備、薄暮攻撃を命ぜられる。今で云う電探等は積んではおらず、目視による攻撃であるので夕方の攻撃基地には夜間帰着となる攻撃法である。先ず一番先に辨当(弁当)航空増加食を取りに行く。もうホウスイ所の方にも戦果が知れているので飛行機様々でとても待遇が良く、云っただけの辨当(弁当)も増加食もそして居眠り防止剤(粉茶を固めて味をつけたもの)もくれる。

 空襲がないのも戦果があがっているからだと愛機の翼の下でペアで車座になり話に花が咲く。中国戦線から南方戦との操縦員の話に皆が感心して聞き入っているうちに夜の出撃についての話が有る。「敵が居るのだったら、先ず戦闘機に会敵する。その時は、決して一機にだけいつまでも射撃はするな。相手の射線が過ぎたら次の向かってくる機をうて、即ち相手の弾丸が来ない機をいつまでも撃っていたら次に向かってくる敵機は自分に弾丸が来ないから十分に照準して撃ってくるのだからと。

 編隊を組んでいて一番ねらわれ易いのは三番機で右下から或いは右上からの攻撃が多い、とのこと。そしてそれを突破したら10〜20分位は一寸ヒマが出来るので、その間に機銃の弾倉の交換とか被弾の調査、故障の修理とかをする様に。だが絶対に見張りは怠るな。そのうちに、敵がもしみつからなくても(太陽方向にあって、海面との反射光等で見えない事がある)敵はこちらを見つけているのだから、大砲の弾丸の洗礼が来る。弾丸の大きさによって違うけれど50米(メートル)以上の水柱が落下地点に数十本と立つのでそれに引っかからない様に飛ばなくてはならない。

 次は高角砲とかいろいろな中火気の弾丸が、槍ぶすまの様に飛んでくる曳航弾(えいこうだん)が入ってるから飛んで来るのは分るが目に見えない速さ(一秒間に千米(メートル)以上)で飛んで来るので、これはもうさけて通ることは出来ない。

 魚雷を落とすのには遠く、機の機銃でも未だ被害を与える距離に達していない時、この時位迄は水柱の心配が有るので余り低くは飛べない。また味方機も攻撃態勢に入っているので、単機づつの飛行になっているこの時はもう敵の戦闘機はいない。何故なら同士討ちになるから。

 その頃はもう敵艦は捕らえているし、攻撃目標に突進するだけで魚雷を発射したら一目散に逃げるだけだと云う様なことを自慢話を交えながら経験談を話してもらう。






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